高校を出て就職で一人暮らしを始め、機材購入の予算に目途がついた頃、私は車を走らせ楽器店へ出向きます。
その楽器店で、その後の人生を変える機材と出会ったのです。
それまで、シンセ楽器類を自動演奏する「シーケンサー」を所有していなかった私は、シーケンサーが付いた鍵盤シンセを物色していました。
私のお目当てはRolandのD-20(15万円くらい)という機種だったのですが、楽器店の店員さんから、「こっちの最新モデル、色んな音が出ますよ。」と案内されたのが、YAMAHAのSY77という、30万円するオールインワンシンセでした。
<YAMAHA SY77> ※YAMAHA社HPより

私は「いや、そんな高いの買えないな…。」と思いながらも、店員さんの「デモ聞いてみます?」で店内に鳴り響いたSY77が放つ荘厳なデモのアンサンブルに、自作の曲が鳴っている情景とを重ね合わせ、声も出せずに頷いていると、「いや~ちょうど昨日5本入ったところで、次はいつ入るか分からんのですよねぇ。」と店員さんがトドメを刺しに来ました。
結局、ハードケースに入ったSY77を手に持って楽器店を後にすることになったのですが、この日から生活が一変しました。
最初は、既存の好きな曲のバンドスコアをあれこれ打ち込んでいったと思います。
完成品を部品に分解するような感覚で、各パートがどのように絡み合ってアンサンブルとなるのか、好きなだけ検証できました。
そして、ある程度、使い方を習得した時点で、いよいよ自作の曲の打ち込みを始めます。
…果たしてどれくらい触っていたのか、もう憶えていませんが、貧相な一人暮らしの部屋に鎮座した一点豪華主義の象徴のようなこの機材は、部屋の模様替えにおいて常に最優先で位置が決まったことは憶えています。
このSY77、その後、自身が歌う自作曲アルバムの制作マシンとなり、ステージ演奏ではリズム隊のバックバンドとなり、ロックバンドではキーボーディストのメインキーボードとなるなど、多岐にわたり大活躍した、まさにオールインワンなシンセサイザーでした。
あの楽器店で、私にSY77を売りつけた…いや、勧めてくれた店員さんには、本当に感謝したいです。
完全に予算オーバーだったことから、その後しばらく何も買えなかったですが、その分、時間をSY77の使い方の掘り下げに充てられたので、機材貧乏も今思えば粋な計らいだったのかなぁと受け止めておきます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
