音域にむせぶ押入れ 《キー設定》

ボーカリストが地声で歌う時の「音域」に注意を払うようになったのは、つい5年前くらいからで、それまでは一切考慮していなかったというのが私の過去です。

5年前とは、楽曲コンペに応募を始めた頃で、当該アーティストの音域に気を付けなければならないという留意事項を受けて、初めて音域を意識したところです。

30年前、押入れの中で自作の曲を自分で歌って録音していた頃は、「なんだか歌いづらいなぁ」くらいの受け止めで、使っていたコードの種類も極端に限定されていたため、キーを変えるなどの発想がなかったと記憶してます。

20年前、バンドでオリジナル曲をやっていた頃は、デモの段階でボーカリストにキーの確認をしていた記憶があるのですが、これはカラオケのキー変更から得た知識だったと思います。

そして5年前、コンペ案件でのアーティストの音域を指定されるのを見て、「ええっ…音域ってコレは何?」と、これまでの無謀なキー設定に、目に見えない冷や汗を流したことを思い出します。

昔は、自分の頭に湧き出たメロディのキーこそがオリジナルキーで、それ以外受け付けませんという、融通が利かない(利かせられない)クリエイターだった私が、コンペを始めることで、こちらからコンタクトが取れない方たちに楽曲を選んでもらうために、音域の設定が当然の条件であるというふうに、頭の回路を切り替えたわけです。

DAW上での作業では、キー変更はMIDIでもオーディオでも全然ラクチンで、苦ではないのですが、私の中から湧き出たアイデアは、音域などお構いなしなので、ワンコーラス仕上げた後に、一番上と下の音を確認して、指定の音域にハマるようにキー変更を行います。

不思議なことに、大体は1発で音域内で収まるのですが、1~2音だけハミ出たりすれば、メロディを少しイジって、「えいっ」と音域の枠内に力ずくで収めてしまうこともあります。

逆に、たまにワンコーラスの音域がオクターブ(13音)の中に収まってしまうこともあり、なぜか勝ち誇ったような気分になり、PCに向けて「Good」の親指を立てます。

あと、ファルセット(裏声)って、何だか、入れていいものかどうか悩みますね。楽曲として、そういうメロディの時は入れるのですが、例えばサビの2廻り目で変化が欲しくなって、1音だけファルセットにしようかなんて考える時があるのですが、遊び半分でファルセットを歌ってもらうのも気が引ける…と思うこともあって、そんな時は地声で歌えるままにすることが多いです。

なので、私の曲は、ファルセットのあり・なしがハッキリ分かれており、多分、コンペ向きには、これからも意図しないファルセットは入れないと思います。

私が作曲した大昔の歌に、サビをずっとファルセットで通した歌があって、今になればキーを変えれば良かったのかも…と考えたりしますが、当時の私のディレクションが「ヨシ!」と言ったのならば、これ以上のテイクは存在しないのだろうと信じています。

元曲の後に、キー変更バージョンを作るなど、セルフカバーを聴いたときのような、独特の腹いっぱい感を味わうくらいなら、ボロボロでもファーストリリースの勢い感だけを残したいと思うわけです。

押入れの中での、布団が吸音材になった独特の音場のボーカルレコーディング。

本当に、勢いだけで録っていたのでしょうね…。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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