長年作曲をしてきて感じることですが、作曲にあったほうが良いものが2つあるのではと思います。
それは、身につける「職人技」と、曲の「着想」(アイデア)の2つです。
「職人技」は、人それぞれ習得の度合いが異なるところですが、楽曲を形にして、人の耳に届けることができるようにする技だと思います。
これには、ある程度の専門知識と機材環境が必要なので、ゼロから始まり、積み重ねによって成熟していくものなのでしょう。
リリースとして人の耳に届けられた時点で、一区切り付くという、まさに職人の成せる技と思います。
一方の「着想」は、頭と心の中での働きなので、専門知識や機材がなくとも生み出すことができます。経験も不問で、真似っこするような感覚でメロディを作ることもできるでしょう。
着想した曲のアレンジ作業やレコーディングが始まれば、着想の働きは一旦収まって、次の曲を作る時まで眠った感じになります。
この着想は、作曲を始めた頃と変わらず昔からあって、今も昔も出てくるアイデアの質には変わりがない気がします。
私は、この「職人技」と「着想」は、どちらも作曲には必要なものと考えます。
比率は50:50が理想だと思います。というのは、極端な話「職人技」だけで100だと、それっぽい楽曲は作れるのでしょうが、事務的に締め切りに間に合わせた感のある、主張を引っ込めた、形式ばった曲になるのではと勝手に想像します。それでは、気だるさの中で楽曲を仕上げることになり、なかなか次の曲を手掛ける意欲も湧かなくなるのではないかと思います。商用的な意味では合格点になるとは思いますが。
逆に「着想」だけで100だと、とても面白いクリエイターだなとは思いますが、自身でも曲全体の音像が分からない状態になるので、それ聴きたさに、熱い意欲が、いずれ職人技を磨くことに費やされることになるでしょう。
この比率ですが、私の場合、作る曲ごとに、比率が変動している気がします。
「職人技」が多く出た曲は、元のシンプルなアイデアに対して、盛り盛り加減がすごく、思いのほかカッコよくなってしまった…という、驚きを持つ曲になります。
ただ、あまり追いかけすぎると、どこにでもあるような「標準顔」の曲になっていきます。
「着想」が多く出た曲は、聴いた感じは普通っぽいのですが、意外性のある展開などに差し掛かったり、アイデアの特徴が分かると、ハッとする曲になります。
ただ、かなりマニアックなこだわりが露呈する場合もあるので、「自己満足」で終わってしまう曲になることもあります。
どちらも、良い方に転がっていけばいいのですが、中には、だんだん変な方向に進んでいることをハッキリ自覚できるときもあるので、そんな時は思い切ってこの2つの比率を逆転させると上手くいくことがありました。
長く作曲を続けるのに、「職人技」と「着想」の両方をバランスよく維持することが、心の安定にもつながってきたと思います。
あと、この「職人技」と「着想」は、作業中にケンカを始めることもあるので、どちらが勝つかを見定めるのも、作曲の楽しみのひとつなのでした。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
